第14回キラク介護川柳受賞作品発表

キラク大賞
賞状と副賞(5万円の商品券)進呈
無にかえる姑に許せる事ばかり  和水

 「無にかえる」という書き出しが良い。続けて「姑に許せる事ばかり」とたたみかけた。本音を言えば、「許せないこと・許しがたいこと」は少なからずあったに違いない。ただし、作者はこの点に触れていない。「無にかえる姑」には何も言わず、「許す」という選択をしたのだ。
 ここに至るまでのドラマを読者に想像させつつ、他方で作者の人間性を思わせる一句だ。深い深い愛情に満ちた一句となった。
 キラク大賞受賞。おめでとうございます。

 今年も第14回キラク介護川柳に、たくさんのご応募をいただきありがとうございました。昨年に引き続きコロナ禍での開催となり、この大変な状況の中ご応募いただけるだろうかと正直不安もありました。しかし今年も例年と同じく、6,000通を超えるご応募をいただきました。本当にありがとうございます。事務局一同、感謝申し上げます。

 今回も10代から90代と非常に幅広い年代層からご応募いただき、多くの方に楽しんでいただいていることを実感しております。施設から毎年必ず応募くださる方、また、毎月継続して素敵な作品を何句も送ってくださる方など、様々な応募者の方がいらっしゃいました。

 感染症対策をする生活が当たり前となり、介護医療現場での業務増加、また在宅介護でも大変制約の多い生活をされていることと想像します。このような時代だからこそ改めて感じる、ご両親への愛や感謝の気持ちを綴った作品が多く寄せられ、読むとあたたかい気持ちになり元気や安らぎを与えてくれました。

 私たち事務局一同も、応募作品に癒され元気をいただき、また明日も頑張ろうという活力になりました。

 これからも川柳に込められた感謝や思いやりの気持ちが力となり、作品を見た方々に伝わる。そんな明るいパワーの連鎖で、このキラク介護川柳が少しでも前向きな気持ちの後押しとなるよう願っております。

 ご応募いただきました皆さま、そしてキラク介護川柳を支えてくださっている皆さま、本当にありがとうございます。来年もまた、みなさまの素敵な作品に会えるのを楽しみにしております。

キラク介護川柳の部屋 運営事務局

優秀賞賞状と副賞(2万円の商品券)進呈
お日さまの香りをそっと掛けてやり  もふもふ

 人間何歳になっても、日の恵みは有り難い。文明が進歩し、自動乾燥なども容易に出来る世の中になったが、ホンモノのお日さまにはやっぱり敵わない。お日さまには、馥郁(ふくいく)たる香りまで付いている。
 作者は、日の恵みに「香り」をプラスして相手に掛けてあげた。しかも「そっと」。こころ優しいこの行為に、読み手の方もほのぼのとした気分にさせられる。そんな一句である。

優秀賞賞状と副賞(2万円の商品券)進呈
ガラス越し百面相で語りかけ  神戸の笑女

 「百面相」という言葉の発見が面白かった。じつにユニークだった。
 そう、いろいろな表情を見せて、相手に語りかけていくのである。「ガラス越し」は、コロナ禍のせいであろうか?今次コロナ下ゆえの光景かも知れない。いずれにしろ、介護施設内の一場面を上手に切り取っている。場面が浮かぶ句というのは、概して佳句となる。この句も佳句の要素を十二分に備えている。

優秀賞賞状と副賞(2万円の商品券)進呈
歳を聞くたびにばあちゃん若返り のりたまご

 ユーモラスな一句。いかにも川柳的な発見がある。川柳の王道を行くユーモア作品であろう。
 人間はある時から、自身の誕生日をあまり喜ばなくなる。それゆえ、年齢をごまかしたり、わざと質問をはぐらかしたりもする。そんなやりとりは日常的に出くわしている。
 して、このおばあちゃん。右記のようなごまかしの上を行っている。さすがである。このおばあちゃんの言動に着目して、句に仕上げた作者にも拍手を贈りたい。

鈴木ひとみ賞賞状と副賞(1万円の商品券)進呈
おうち時間よりも元気なデイ時間 のろまのロマン

 デイで過ごす時間が幸せであることにホッとされているのではないでしょうか。
 うちの父は、デイに通うはじめの頃、「絶対に行きたくない」と頑張っていました。ようやく行くようになり、少し経った頃でした。いつ「行かない」と言いだすのではないか、と母と私はハラハラしていました。
 ある時、やってきた迎えの車の中から父に手を振る女性がいました。父はニコニコして、私たちを振り返ることもなく、そそくさとバスに乗り込んでいました。母と私は吹き出しましたが、父の笑顔に安心したことを思いだしました。
(評:鈴木ひとみ)

順不同 敬称略

団体賞
団体賞作品

 生徒の皆さまから369通ものご応募をいただきました。作品に目を通すと、身近にある介護についてそれぞれが考え、想いを発信してくれているのがよく分かります。
 おじい様おばあ様に想いを寄せたもの、社会問題になっているヤングケアラーに触れている句もありました。気持ちをストレートに表現する新芽のような若いエネルギーと瑞々しい感性に溢れた作品の数々に感動いたしました。
 キラク介護川柳を教育現場で取り上げてくださったこと、また、生徒の皆さまに介護について考える機会を与えてくださったこと、大変嬉しく思います。この度は団体賞の受賞、大変おめでとうございました。

選者
一般社団法人 全日本川柳協会
  副理事長・事務局長 江畑 哲男 氏
各賞について

賞状および賞品の発送は、10月初旬を予定しております。
今しばらくお待ちくださいませ。

キラク介護川柳特別賞作品と参加賞についてはこちら