第6回キラク川柳 6月の月間優秀作品｜キラク介護川柳の部屋

母が指す　窓辺の桜も　ほころびぬ

足し算に　百点ついて　はしゃぐ母

しわしわの　祖母のお腹が　笑う風呂

友の苦を　手を取り慰む　想いやり

腕を組む　杖は息子の　大きな手

祖母の声　受話器に残る　あたたかさ

ラブレター　出てきてほほを　染める母

コート脱ぎ　「歩いてみるか」と　春の声

グチ言って　自分でうなずく　母げんき

スタッフに　うつした　母の俳句熱

爽やかな　歌で介護の　夜が明けた

杖がわり　そっと支える　細い肩

縁側で　身を寄せ合って　眠る父母

雲流れ　年も流れて　百寿かな

笑いじわ　増えて幸せ　また増える

かき氷　一さじふくみ　母に夏

年ごとに　丸みをおびる　影法師

大笑い　入れ歯が外れ　また笑い

遠くても　電話が言葉の　杖となる

母背負い　巡る絆の　深さ知る

歳聞かれ ばあちゃんいつも サバをよむ

百歳が　がんばりすぎと　喜寿に言う

同窓会　介護談義に　花が咲き

肩たたく　孫の腕が　たのもしく

天命と　識（し）れば介護も　楽になり

合わされた　歩幅に合わせ　歩く午後

親譲り　歩形を真似て　楽になる

お花見の　輪のまんなかの　車椅子

だいじょうぶ　いつも見守る　父の声

幼な子の　顔に戻って　うたう母

「まだ負げね」　そんなおばあに　はげまされ

ヨウカイゴ　「妖怪語？」と　孫が聞く

左みて　右みて空みて　父笑う

ふと光る　母の涙が　ボクを打つ

介護する　つらさ楽しさ　ありがたさ

抱き上げて　妻の軽さに　涙ぐむ

離れてる　分だけ優しい　次男坊

される身に　なって初めて　知る苦労

手鏡で　　妻とふたりの　　月見する

けんかして　別室へ寝た　夫を恋う

陽だまりを　選びいざなう　車椅子

その笑みに　世話する誰もが　また惚れる

されるより　出来て嬉しい　介護かも

眠ったら　帰るという子よ　眠るもんか

孫が来て　涙のツボを　押しまくる

おもいやり　歩幅となって　祖父支え

寝たきりも　楽しく生きる　母の知恵

お迎えが　来ると言いつつ　母大盛（おおもり）

知恵袋　歳の数ほど　持っている

目を覚まし　笑顔こぼれる　うれしさよ