第7回キラク川柳 6月の月間優秀作品｜キラク介護川柳の部屋

親だけの暮らしさせない親孝行

うちでみるその一言が言えなくて

引き算を怒らずそっと受け入れる

ありがとうと声なき父ののどがなる

歯の数を想像しつつ作る飯

転ぶとき足に大地が絡みつく

この脛を噛じっていたのか人浴日

介護の輪円周率は永遠に

幸せの意味を何度も考える

看取るのはお前か俺か犬を飼う

テキパキと妻は羞恥を与えない

杖ついていいのだわたし七十五

この父のどこに似たかを考える

春うらら介護はやさしい景色です

隊長の指令にすれば聞く親父

結婚で誓ったことが試される

紙おむつ濡らしじいちゃん九条説く

想い出を消えた数だけ増やす今

思い出を忘れたならばまた作る

オレオレに介護に来いと言ってやる

母起こす妻のきれいな玉の汗

車椅子アンパンマンの旗立てて

おにぎりをにぎった母の手を握り

完璧は介護の辞書に無いと知り

明日また明日またねと強く言う

今できる親孝行と介護する

めでたいか老大国で長寿国

優しさに気づけなかった今までは

つぶれそうおぶってやるとは云ったけど

馬鹿にした手すりが今は命づな

傘寿なお杵で餅搗く敬老日

老いたりていえどあなたは百科辞典

譲られて降りれず一つ次の駅

痒いとこやっぱり妻の手がとどく

デイケアで 曲がったヘソも 治す父

徘徊について回って足が棒

お迎えに来たと言うなよケア送迎

日に三度犬にせがまれ歩き癖

不味いとは言えぬ夫の卵粥

ボケてないタイムトラベルしてるだけ

父のよな父にと思う歳になり

帰りにはポチに引かれる散歩道

優しい目やさしい言葉やさしい手

口ぐせの米寿のくせに五十肩

デイケアは「旅行」お風呂は「温泉」だ

楽しみもあるさ介護も生活さ

「介」の字が妻の姿に見えにけり

長かった介護で見れた家族愛

何度でも支えているからもう一度

今せねば母の介護へ残る悔い