運営事務局の一句

vol.114

九十の人生重ねるいろは歌

詠み手 キラク川柳の部屋
運営事務局
小林 彩那

祖母の家の庭には、野良の地域猫がご飯をもらいにやってきます。
猫の呼び名は、「たまちゃん」と「はなちゃん」。

一見、ありきたりすぎる呼び名ですが、祖母なりの由来があるようで、
たまご色の「たまちゃん」と、鼻に模様のある「はなちゃん」なんだそう。
絶妙なネーミングセンスに、家族みんなで気に入っています。

野良の地域猫なので、様々なお家からご飯をもらって、
それぞれの名前で呼ばれているはず。
それでも、祖母が「たまちゃん」「はなちゃん」と呼ぶと、寄ってくるのは
分かっているのかいないのか……

夕暮れ時、いつも猫たちがご飯を食べにくる時間になっても猫が来ない日。
「もうしばらくしたら来るかしら?」と祖母は窓辺でじっと待っていました。

日が落ちて暗くなってきた頃、近づいてくる鳴き声に気づいた祖母は、
嬉しそうにご飯を用意していました。

猫たちのご飯の時間を楽しみにしているのは、祖母のほうかもしれませんね。


足腰が弱くなってきた祖母ですが、
猫たちが来ている時はしゃがんで、
優しい眼差しで眺めています。

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