運営事務局の一句

vol.95

ベルの音お願いの合図が届かない

詠み手 キラク川柳の部屋
運営事務局
北谷 美優

私の祖母は我が家で介護生活を送っていました。祖母は自分の部屋で横になっていたため、何かお願いがある時には家族の誰かを呼ばなくてはなりません。そこで妹はファミレス等に置いてある呼び出しベルを100円ショップで購入して祖母に渡し、「これがお願いの合図になるから。」と祖母と私たち家族に言いました。

祖母は妹の言う通りにベルを鳴らしてお願いの合図をしてくれましたが、祖母の部屋から聞こえてくるベルの音に私たちは毎回気づくことができず、すぐに駆けつけられない時もありました。最終的には、祖母がお願い事をする時は携帯電話を使うようになり、とうとうベルは使われなくなりました。

100円ショップで購入したベルの音が家中に届くわけがないと家族の誰もが思っていたことですが、祖母に楽をさせたいという妹の優しい気持ちからの提案だったため、家族全員がその提案を受け入れました。

祖母は申し訳なく思っていたようですが、呼んだらすぐに駆けつけてくれる携帯電話のほうが安心できたのだと思います。

それ以来あのベルが鳴ることはありませんでしたが、今でも似たベルの音が聞こえる度に、私は大好きな祖母のことを思い出しています。


旅行好きな祖母が私と妹を連れて
北海道旅行に行った時の思い出の写真です。
祖母の口癖は「私は孫と旅行に行くために
頑張って仕事しとんよ!」でした。
そんな優しい祖母が私は大好きでした。

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