vol.98
キラク川柳の部屋
運営事務局
小林 彩那
これは私が幼い頃に亡くなった曾祖母の話です。
大正2年生まれの曾祖母は、当時88才。
足腰は弱っていましたが、とても元気で、祖父母の家で暮らしていました。
そんな曾祖母は、当時5歳の私のことを孫だと勘違いしていたようで、「わーちゃん」という母の呼び名で私のことを呼んでいました。「わーちゃん」と呼ばれるたびに “ちがうよ” と伝えるのですが、呼び名はずっと変わりません。
幼い頃の私は、「母と私は全然違うのに、どうして間違えるの?」と不思議に思っていましたが、今思うと曾祖母はいつまでも「孫は幼い子どもだ」と思っていたのかもしれません。
私が曾祖母の部屋を訪ね、座椅子に腰かけて丸まった背中に声をかけると、
顔を上げて微笑んで、私のことを「わーちゃん」と呼ぶ。
その一連の流れが、まだ幼かった頃の曾祖母との貴重な思い出です。
当時5歳だった私は、覚えていないことのほうが多いのですが、
いつもニコニコと優しく出迎えてくれる曾祖母の姿は、今でも鮮明に覚えています。
曾祖母は庭にやってくる野良猫を
よく眺めていました。
遊びに来る猫たちも代替わりしましたが、
今でもたくさんの野良猫たちが遊びに来るので、
家族みんなで癒されています。