第8回キラク川柳 5月の月間優秀作品｜キラク介護川柳の部屋

介護じゃない命をくれた恩返し

百点が取れぬ介護を母に詫び

ぼくの名を忘れた母にカーネーション

歯磨きをさせてもらったようにする

病む窓に青空それもひと握り

消えかけた希望もしょって立つ義足

今日もまたパー出す母にグーを出す

母の肩やせたといえずそっと揉む

「大丈夫」握る母の手変わらない

見舞い客いない隣りが気にかかり

老々とふたりで長く生きてやる

もう来ぬか立って見下ろす窓の外

父の髪白髪の分だけ愛された

認知症勲章にして胸に下げ

在宅を求められても四畳半

ふと笑うあの日の母と２人居る

遠くなる耳もに届く子守唄

この笑顔許すしかなき認知症

スプーンで千切って母へ桜餅

失語した父がぽつりとありがとう

指定席僕の背中は母のもの

湯を流す妻の背中に子が映る

笑わせることしかできぬ次男坊

生甲斐を持って歩けと杖が言う

犬と寝る子供のような顔をする

今までも二人三脚これからも

おばあちゃんどんなになってもずっと好き

介護士にそっと礼して去る息子

結婚をやめて介護の母えらぶ

布団干し浅きくぼみに頬寄せる

頼れない頼りたくない意地もある

しあわせはあなたの笑顔があればこそ

肩たたく孫のお手々は魔法の手

産んでくれ育ててくれた母介護

寝たきりです起きてばっかりだったから

病む母に生まれた時の話聞く

良き日をとデイサービスのバン停まる

思い出の引き出し多しどれだっけ

うす味のあったか介護で好い加減

寄り添えばいろんなことが見える明日

すまないね頭下げられかしこまり

母の背にもたれて昔を語りかけ

ライバルがいてリハビリに精を出す

臥してから四角い顔が円くなり

置物のように縁側で日向ぼこ

退院し妻がまず見る台所

介護して介護されても救われる

叱られぬデイは家より落ち着ける

こぼす愚痴ハイハイハイと拾い上げ

ぎこちない手で精一杯の握り飯